浦和地方裁判所 昭和50年(わ)876号 判決 1977年3月14日
一
本店所在地 埼玉県桶川市東一丁目九番五号
商号
株式会社 共栄
代表者
代表取締役 新井栄廣
二
本店所在地 埼玉県桶川市末広一丁目一番一号
商号
富士建物有限会社
代表者
代表取締役 新井栄廣
三
本籍 埼玉県桶川市寿二丁目一、二九七番地
住居
同県同市大字坂田一、五〇四番地一
職業
会社役員
新井栄廣
大正一五年九月一日生
右の者らに対する法人税法違反被各被告事件について、当裁判所は検察官井口衛出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人株式会社共栄を罰金四〇〇万円に、被告人富士建物有限会社を罰金六五〇万円に、被告人新井栄廣を懲役一〇月に各処する。
被告人新井栄廣に対し、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予する。
理由
(罪となるべき事実)
第一 被告人株式会社共栄は、埼玉県桶川市東一丁目九番五号に本店を置き、不動産売買およびレストラン、モーテルの経営等を事業目的とする資本金五〇〇万円の株式会社、被告人新井栄廣は、同被告会社の代表取締役として、その業務全般を統括しているものであるが、被告人新井栄廣は、同被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、モーテルの受入宿泊料の一部を除外し、架空の土地造成費を計上するなどの方法により、その所得の一部を秘匿したうえ、昭和四六年七月一日から同四七年六月三〇日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が七六三三万六、二二七円で、これに対する法人税額は二六九〇万九、二〇〇円であるのにかかわらず、同四七年八月三一日、大宮市土手町三丁目二八四番地大宮税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二二五七万五、二二七円で、これに対する法人税額は七一七万四、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出して同日の確定申告期限を徒過し、もつて不正の行為により、右事業年度の法人税額一九七三万四、九〇〇円を免れ
第二 被告人富士建物有限会社は、埼玉県桶川市末広一丁目一番一号に本店を置き、特殊公衆浴場の経営等を事業目的とする資本金三〇〇万円の有限会社、被告人新井栄廣は、同被告会社の実質経営者として、その業務全般を統括しているものであるが、被告人新井栄廣は、同被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、受入入浴料の一部を除外するなどの行為により、その所得の一部を秘匿したうえ、
(一) 昭和四七年七月一日から同四八年六月三〇日までの事業年度において、同被告会社の実際所得金額が一二九八万一、九八九円で、これに対する法人税額は四四七万八、一〇〇円であるのにかかわらず、同四八年八月三一日、埼玉県大宮市土手町三丁目一八四番地大宮税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一八四万六、三五二円で、これに対する法人税額は四八万六、九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出して、同日の確定申告期限を徒過し、もつて不正の行為により、右事業年年度の法人税額三九九万一、二〇〇円を免れ
(二) 昭和四八年七月一日から同四九年六月三〇日までの事業年度において、同被告会社の実際所得金額が六七九八万八、八八三円で、これに対する法人税額は二六一三万〇、一〇〇円であるのにかかわらず、同四九年八月三一日、前記大宮税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一一四二万二、三〇一円で、これに対する法人税額は三五八万二、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出して、同日の確定申告期限を徒過し、もつて不正の行為により、右事業年度の法人税額二二五四万七、九〇〇円を免れ
たものである。
(証拠の標目)
判示全部の事実につき
一、被告人新井栄廣の当公判廷における供述
判示第一の事実につき
一、被告人新井栄廣の検察官に対する昭和五〇年七月一〇日付、同年同月一一日付各供述調書
一、被告人新井栄廣に対する大蔵事務官の質問てん末書一一通
一、登記官竹本惣一郎作成の株式会社共栄の登記簿謄本
一、大宮税務署長田中源一作成の証明書二通
一、検察事務官作成の昭和五〇年七月二三日付捜査報告書
一、村田貞義、矢部志づ子、岩崎光孝の検察官に対する各供述調書
一、矢部志づ子、株式会社春日建材(代表取締役春日義三)内野守三、川上登容子、遠藤セツ各作成の答申書
一、村上美幸に対する大蔵事務官の質問てん末書
一、大蔵事務官田中猶一作成の回答書
一、大蔵事務官傘木忍作成の調査書
判示第二(一)(二)の事実につき
一、被告人新井栄廣の検察官に対する昭和五一年四月二〇日付、同年同月三〇日付各供述調書
一、被告人新井栄廣作成の答申書七通
一、登記官竹本惣一郎作成の富士建物有限会社の登記簿謄本
一、大宮税務署長高橋茂作成の証明書
一、検察事務官作成の昭和五一年四月三〇日付捜査報告書
一、新井広一、阿久津芳行の検察官に対する各供述調書
一、大蔵事務官作成の調査書一二通
一、宮本照子、中村清敏に対する大蔵事務官の質問てん末書各二通
一、次に掲げる者の作成にかかる各証明書
名取賢次郎、鶴田愛(二通)、鴫文男、横倉正義、近藤敬司、由井由昌、田口和彦
一、次に掲げる者の作成にかかる各答申書
長谷川比富(五通)、茂木松寿(三通)、峰岸米吉、鈴木辰之進、阿久津芳行(二通)、梶山恵夫、伏見恒次、宮本照子、矢部博、岩崎一、川上登容子、遠井セツ、須永憲二、栗原敬司、前川寛、近藤敬司、梅木礼之輔、箱田英武、横倉正義、小畠薫二、糖谷貫(二通)
(法令の適用)
被告人株式会社共栄、同富士建物有限会社の判示各所為は、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条に、被告人新井栄廣の判示各所為はいずれも同法一五九条に該当するので、被告人新井栄廣についてはいずれも所定刑中懲役刑を選択し、被告人富士建物有限会社、同新井栄廣の各罪は刑法四五条前段の併合罪なので、被告人富士建物有限会社に対しては同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算した金額の範囲内、被告人新井栄廣に対しては同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二(二)の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で各処断することとし、被告人株式会社共栄を罰金四〇〇万円に、被告人富士建物有限会社を罰金六五〇万円に、被告人新井栄廣を懲役一〇月にそれぞれ処し、被告人新井栄廣に対し、情状により同法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から三年間その刑の執行を猶予することとする。
よつて、主文のとおり判決する。
(裁判官 北野俊光)